
この年の渡良瀬川のライズは本当に難しかった。
水面にはコレといった昆虫の流下が見られないのに、定刻になるといつも決まって始まる嵐のようなライズは、その時自分が考えつくハッチマッチャーの殆どを拒否していた。
時を同じくして、常連の間で囁かれていた話題と言えば「フライが浮かない」ことと「魚が出てもフッキングしない」という事。
フライが浮かない事は別として…皆が皆、フッキングに苦心しているという部分から、今だ誰も核心部には迫りきれていない…ということを伺い知る事が出来た。
ある日、偶然にもフライに反応した魚が「拒絶の反転」の際に誤ってフライを巻き込んでしまった事から転機が訪れた。
その問題の時間帯にライズしていた魚の胃の中には、羽化に失敗したアカマダラカゲロウのダンでビッチリと埋め尽くされていた事実を、ここで初めて知ることとなったのである。
(今にして思えば、ちょっとライズを我慢して、その下流部で流下をネットを仕掛けておけば他愛もない事なのだけれど…当時の自分の心中をお察し下さいませ)
かくして、魔の無限ループ的フライローテーションから解放はされたものの、苦汁を飲まされ続けた果てに出来たフライは…それは醜いモノではありました。(もう、余裕なんか全然ありませんからね…)
たまたま現場でお逢いした島崎憲司郎さんと、どんなフライを使っているのか…みたいなノリで見せ合ったフライパターン。同じ状況を打破すべく作られたフライ…という事で、発射方向は同じらしいのだけれど、全く違う完成度に唸る事しばし。
やはり、この方は普通じゃありません。
そう…もうお分かりの通り、その時の島崎さんのフライというのが、BFD(バックファイヤーダン)であります。
当時、渡良瀬の水質は非常に悪化していて、ある時間になると合成界面活性剤が水面を覆い尽くし流れていたようです。(フライが浮かない…というのは、そのせい)そこにアカマダラのハッチが時間的に丁度シンクロ。羽化の為に水面まで浮上した個体は、活性剤のおかげで水面を破る事が出来ず溺れてしまう。パッドは割れてウィング自体伸びつつある状態で溺れ死んだ個体が、水面直下をかなりの密度で流下する結果となり、それがこのようなマスキングハッチとなって僕らの頭を悩ませていた…というワケです。
さて、そんな昔話ついでに、自分がBFDを使うまで愛用していた「短冊ウイング」を…恥を重々承知で公開いたします。
もちろん、こんなの当時雑誌では恥ずかしくて出せませんでしたから…本邦初公開(笑)となっております。(島崎さんにしか見せてません)丁度、当時のマテリアルも手元にあったので、朝の起き抜けにサクサクっと巻いてみました。
違うのは、せいぜいスレッド(今回はGUDEBROD)くらいだと思います。
奇しくも、フライウイング2のグレー(のちに黒)を撚って使っている部分が共通だったようです。ただ、自分の場合、ウイングをこうして撚る事が大前提なので、あえてウイングの形に整形しないで「短冊」に切り出して使用していました。
また、その方がウイング材を効率よく切り出せる…というのも理由の一つでした。
次回は、本題のBFDのタイイングを紹介したいと思います。
一応、当時のご本人から直々でタイイングをご教授受けましたが、その後勝手に手法を簡素化しちゃってます。
現在コマーシャルフライで販売されているBFDとはバランス的にも若干異なりますが、そこのところはガッツリと現場で磨きをかけておきました。INAX的試行錯誤の末とご理解下さい。
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