
雨前の曇天。
今日の渡良瀬は、これ以上望むべくもない程絶好のライズ日和。
アチコチのポイントを巡り歩いて、いつもよりは少し遅めにココに到着した時には既にライズは始っていました。
張り付いている常連さんの話によると、ライズは散発で、それもウェーディングによる接近で「パタッ」と止んでしまうとの話。
のっけからキビシイ様相です。
最初は単発で単独だったライズも、そろそろ11時になろうかという頃には、その数と頻度を増します。
本当に静かに…ライズのナナメ下流側面まで「間合い」を詰め、あと一歩位は行けそうかな…と、その手前でウェーディングは止めておきます。
タイミング計って、たっぷり目のリーチを掛けた第1投。
上流に向けて鋭角なL字形に落としたリーダーを頂点に…そこからライズに向けて、一直線に下流に伸びたティぺットの先に、いつも見慣れたフローティングピューパの微かなアップライトウイングが水面を捉えています。
このまま普通に流れて行きさえすれば、今まさにライズしようとしているヤマメ達の視線には、ライトパターンを放ちながら流れ来るフライの姿が確実に捉えられているハズでしょう。
フライが置かれた水面と、ラインが置かれた水面。
その「流速差の帳尻合わせ」は、この釣りにおいては“永遠のテーマ”と言っても良いのかも知れません。
特に、底石の配置具合で川底から吹き上がってきた流れが水面を盛り上げる事によって生じた「ヨレ」と、二つの微妙に流速の違う流れが干渉した部分に発生する「ヨレ」は、とても厄介です。第一…未だ、こんな流れを克服する“術”を自分は知りません。
着水したラインがこんなヨレに捕まったら最後…可能な限りのスラックも、ほとんど瞬時にそのアドバンテージを失ってしまうのです。
そして、次の瞬間から始まる「フライの暴走」を止めることは…もう不可能です。
今回、やっと始まったヤマメ達がライズは…皮肉にも見事に、この厄介な「後者」に当て嵌まってしまったのです。
(そういうトコロでライズが起こりやすいのも、この川の特徴なんですが…)
唯一の打開策。
それはもう…可能な限りライズに近づくしかない。
それは今現在の自分が行き着いた、唯一の答えなのです。

ウェーダーのこんな痕跡は、まさにその証といえましょう。
けれど結局、怒濤のごとく繰り返されるライズを前に、彼らを反応させる事は出来たのは、たったの3回だけ…そして。
遂には、一度も自分のフライが魚達の顎を捉える事はなかったのです。
僅かな流下量に、前後左右へと大きくレーンのブレる…確かにヤリ難いライズではありましたが、今回は完全な敗北です。
でも、必ずや仕留めて見せますよ。
当然この、タチの悪いヨレの中で…。